まき姉の小宇宙

創作小話描いてます ゆるりと見ていってくださいね

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トランポリン・ワルツ

ここいら一帯で

ちょいと有名な

トランポリスト(トランポリンをする者の意)がいる

その名はワルツ

まるでワルツを踊るかのように軽やかに

しなやかに楽しげに優雅にファンタスティックに

彼女はトランポリンを跳ぶのだ

 

トランポリンは

思いっきり足を踏みしめ

宙に身を預け

再び着地する

その間の躍動感

演技力 ドラマチックさ

すべてが観客の目に映る

 

トランポリニストのワルツは

どの瞬間を切り取っても完璧だった

 

完璧に、息をのむほどに

うつくしいのだ。

 

 

ワルツのトランポリンを

いつも

いちばん近くで見ている子供がいた

 

キャンディ屋のキャンシーだ

キャンシーは、ワルツがトランポリンをするときには

かならずいちばんに走り寄ってくる。

金髪のおさげ髪をバタつかせながら 息をはずませ

いちばん前の特等席をとるのだ

 

キャンシーは

ワルツのトランポリンを見るたびに

じぶんも将来はトランポリニストになるのだ!と

胸をはずませながら にこやかに晴ればれと言う

 

そんなキャンシーのことを

ワルツも 妹のようによく可愛がっていた

 

ある日

キャンシーはワルツにこうおねだりをした。

わたしも一度 ワルツといっしょに翔びたい!

ワルツがいつもトランポリンをするとき

どんな景色をみているのかが知りたい

それを知ることができたら

きっと自分も ワルツのようなトランポリニストになれるはずだから、と

 

ワルツは快く承諾した

 

背の丈がひとまわり小さいキャンシーを身体の前に抱きかかえながら

軽やかに

踊るように

跳んだ

 

 

キャンシーは想った

 

ああ、やっぱり

ワルツはすごい!

 

 

 

のちにキャンシーは

自分よりひとまわり背丈の小さい

熱心でキュートな妹分と

おなじように

トランポリンを翔ぶ

 

その子もまた

いつか自分がワルツに見せてもらった景色を

引き継いでいく子なのだと

確信をもって。

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