誰からも思い遣られるキング<王>
王家に生まれ 育ち
国を統治するようになった。
「ふええ・・・ミルクこぼしちゃった・・・」
「あらあら王様、拭いて差し上げますからどうか泣かないで」
朝食のミルクをこぼしてしまい涙目になっているところを
女中さんがすぐに拭いてくれた。
「ありがとう・・・」
「いえ、仕事ですから(ニッコリ」
どうやらわたしは姿も行いも
どういうわけか幼く見えてしまうらしい。
先日も
某国の大使と謁見したときに
「皇太子さま、お父上はどこにいらっしゃいますか?」
と聞かれた。
皇太子は・・・まだ産まれていない。
「朝の散歩をしてくる」
「はい、王様。外は肌寒いですよ。上着を羽織っていかれませ(ファサッ」
「あ、ありがとう」
トコトコと中庭を散歩する。
風が気持ちいい
「みゃーーーお」
「うん?猫?」
振り向くと猫が私の紋章をくわえていた
「あれ!いつのまに落としちゃった・・?
ありがとう・・・・」
「みゃ~(いえいえ)」
わたしはこの王家に産まれ
ずっとこんな調子で
思い遣られ 暮らしてきた。
たまに
じぶんの存在理由がわからなくなるときがある。
でもそんなふうに悩んでいると
だれかがすぐにまた
声をかけてくれるのだ。
他の国の王はどんな暮らしをしているだろうか?
わたしとおなじ?それとも全く違うだろうか?
わたしは王として申し分なく働けているだろうか?
「王様ーー!!焼きリンゴパイが出来上がりましたよ~!」
「あ、はーい。いま行きます~!」
この国の王家は普通だろうか
普通とは程遠いのだろうか
「おいしい」
おいしい。
おいしい。
焼きリンゴパイは・・・おいしい。